2023.8.17【活動報告】ホワイトリボンラン2022の寄付金でできたこと(ケニア)

2022年からケニアの若者を対象としてスタートした、SRHRの知識を学び、性と生殖に関する保健サービスを受けられるイベント「ユースオープンデー」。継続を望む地域の声に応え、2023年はホワイトリボンランの寄付によって開催地をさらに増やし、スラムを含む5つの地域で実施しました。

ジョイセフは、ホワイトリボンラン2022による寄付金5,549,710円で、ケニア・ニエリ県のニエリセントラル地区、キエニイースト地区、キエニウエスト地区、ムクルウェニ地区、オダヤ地区の5地域で支援活動を実施しました。
ケニアの10代の若者を対象として、意図しない妊娠や性暴力予防、HIVを含む性感染症予防など、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)について学ぶ機会を提供。また、避妊薬/具の提供、HIV検査、栄養検査、医療スタッフによるカウンセリングなど、性と生殖に関する保健サービスを受ける機会を増やすことができました。


ホワイトリボンラン2020年の寄付で2022年に実施した若者のSRHR啓発イベント「ユースオープンデー」が、地域コミュニティで今後も必要とされています。

ホワイトリボンラン2020からの寄付で、2022年に試験的に実施した若者向けSRHR啓発イベント「ユースオープンデー」。その効果を、日頃から地域の活動を支えている地域保健ボランティアや保健局、そして何より地域の若者たち自身が実感し、定期的なイベントの開催を希望していました。

ユースオープンデーに参加することで、若者が、性感染症の検査・治療をはじめとする保健サービスの無償提供、医療者によるヘルストーク*、保健施設の紹介ツアー、避妊具の装着方法の指導など、SRHRの知識とサービスに触れる機会を得ることができます。自分の体と向き合い、自分らしく生きるためのライフスキルを身につけることで、若者一人ひとりがエンパワーされ、その結果、特に10代の女の子の意図しない妊娠を防ぐことに繋がります。

*ヘルストークとは?
医療スタッフや地域保健ボランティアなどが主な話し手となり、参加者とともに進めていく保健教育セッション。HIV/エイズや性感染症、10代の妊娠、ジェンダーに基づく暴力、薬物乱用など、参加者にとって身近な問題を啓発します。たとえば薬物乱用がテーマのヘルストークでは、薬物が心身に及ぼす作用・依存症・身近な人に誘われた時の断り方など、実践的な内容が話し合われています。

ケニアのニエリ県における若年妊娠(対象10-19歳)件数1,592人/2022年

2023年は、若者や地域の声に応えて、より多くの若者にSRHRの情報と保健サービスを届けるために、ホワイトリボンラン2022からの寄付金を活用し、各地域の病院や保健センターの計4カ所で「ユースオープンデー」を開催しました。参加した若者437人に対して、SRHRについて学ぶ機会と避妊を始めとした保健サービスを提供することができました。※サービス内容は以下表参照

ユースオープンデー参加者数/保健サービスの利用実績
※保健サービスは無償提供

施設名 開催日時 参加者数 避妊サービス
(カウンセリング含む)
性感染症スクリーニング・治療 HIV
カウンセリング
栄養アセスメント
(BMI※検査含む)
1.オダヤサブカウンティ病院 2023/01/28 39人 0 0 9 6
2. ナルモル保健センター 2023/02/11 231人 13 25 22 17
3. ムクルウェニサブカウンティ病院 2023/03/18 69人 9 29 15 26
4. ムウェイガ保健センター 2023/03/25 98人 11 23 35 9
合計 437人 33件 77件 81件 58件

※BMI: BMIは、Body Mass Index(ボディ・マス・インデックス)の略称です。肥満度を表す指標として、国際的に用いられる体格指数で、肥満や低体重(痩せ)の判定に用いられます。

活動の様子

集客は若者の主導で
ユースオープンデーの告知のために、若者ピア・エデュケーター(同世代の若者にSRHRの知識を伝え、自らも行動するボランティア)たちは、街を歩いて広報するだけでなく、自分たちで広報素材をデザイン、制作し、SNSを通じて多くの思春期の若者たちの参加を募りました。

若者ピア・エデュケーターが自らデザイン 


 

街を練り歩きユースオープンデーの開催を告知


 

ユースオープンデーの様子

ユースオープンデー開催中のダンスタイム 


 

保健施設ツアー


 

ユースオープンデーを通して、若者と医療者のSNSグループ“Mukurweni super youth”が開設。若者たちが直接、近隣施設の医療者にSRHRに関する悩みや保健サービスについて聞くことができるプラットフォームに。


 

ムウェイガ保健センター

男性用コンドームの装着方法について学ぶ男の子たち。配布も行いました


 

保健センター職員によるヘルストーク(保健教育セッション)-薬物乱用・アルコール中毒について

VOICE

①ニエリ県保健局 リプロダクティブ・ヘルス担当官

今回ジョイセフのサポートのもと実施したユースオープンデーは、非常に有効でした。心配だった集客も上手く進めることができ、地域の若者、特に多くの思春期の男の子と女の子を集めることができました。開催場所となった全ての施設及び地域の首長を始めとするコミュニティの関係者が、この取り組みを持続していくことにコミットしています。私達ニエリ県保健局では、ユースオープンデーの実施費用を年間予算計画に組み込んでいます。ユースオープンデーのガイドライン開発、実行計画の策定、予算作成、活動実施、全ての過程においてサポート頂いたジョイセフ及びニエリのジョイセフスタッフの皆さんにとても感謝しています。ニエリ県保健局は、今後もジョイセフとのパートナーシップのもと、事業活動を進めていける事を楽しみにしています。

② ユースオープンデーに参加した若者 若者ピア グレース・カグレ・マチャリア

ニエリ県で開催されたユースオープンデーにはたくさんの若者が参加し、大成功を収めました。開催場所近くの保健施設で働くスタッフの方々による大きなサポートもあって、私たちのコミュニティにも受け入れられていました。ニエリ県保健局には、定期開催の要望も出されています。サポートしてくださったジョイセフのスタッフの方々、日本から支援してくださった皆さん、ありがとうございました! いただいた支援がコミュニティに大きなインパクトをもたらしました! ケニアのニエリを選んで、このような機会をくださった皆さんに改めて感謝しています。

③ ジョイセフ担当スタッフから 海外事業グループ ケニア駐在 藤島

ダンスタイムで全員が輪になって踊りを楽しんでいる時、後ろの方でこっそり女の子3人が医療スタッフに声をかけて、HIV検査のために手を繋いで施設に入っていくのを見ました。検査を受ける勇気が出ない、周りから変な目で見られるのではないか、そういった1人だけでは乗り越えられない不安を3人で乗り越えた、この取り組みの真の価値を垣間見た瞬間だったように思います。若者たちの連帯を生む機会さえ作ることが出来れば、あらゆるチャレンジも乗り越えられるのではないか。このユースオープンデーの開催を通して強く感じました。